MIMOCA

MIMOCA

 前回のブログで予言したとおり、香川県で訪れた美術館について書く。書くことが決まっている安心感。ブログの更新回数の目標を設定する時点でタイトル(テーマ)だけでも決めておけば書きやすいのではと、今頃になって思う私。今回訪れたのは「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)」。今までに2回行ったことがあり、また行きたいと思わせる大好きな美術館のひとつである。

 丸亀と言うと「丸亀製麺」を思い出す人が多いと思うが、株式会社丸亀製麺の本社所在地はなんと兵庫県で、丸亀市内に丸亀製麺は存在していない。うどん県と呼ばれる香川県に丸亀製麺は2店舗しかない。競合が多いということか。

 さて、美術館に話を戻そう。
講演の仕事で高松市に呼んで頂いたので、また行きたいという思いが強く残っている丸亀市現代美術館の開催中の企画展について調べた。タイトルは「窓展 窓をめぐるアートと建築の旅」。なんの迷いもないぐらい興味をそそるタイトル。コロナ禍で予約制になっている美術館もある中ふらっと立ち寄れること、本来は2020/7/11-9/27だった開催期間が2020/10/13-2021/1/11に変更になっていたことに勝手に運命を感じ、これは行くしかない!と往復の電車の時刻を確認。気分的には講演を済ませ、開放感をもってアート探訪としたいところだったが、講演前の午前中の時間を使って高松、丸亀を往復することにした。

窓展 窓をめぐるアートと建築の旅

 「窓」が描かれている絵画が古今東西問わず並べられていると想像していたが、想像をはるかに超えた展示物で驚いた。副題に「アートと建築の旅」とあるように、建築からの視点でどのように採光を取り入れるかまで計算しつくしている設計図もあり、額縁すらある意味「窓」であるという解釈で展示されている絵画もあった。壁一面に時系列に並べられた古今東西の「窓」にまつわる写真や文献。前に立つと巨大扇風機がオンになり、その風の力で窓の扉が開いたり閉じたりするインスタレーションもバタンバタンという音とともに楽しめるようになっていた。パウル・クレーの小さい四角を並べて描かれた抽象画も小窓に見えてくる不思議。

 いちばん面白かったのは、日中韓のアーティスト3人によるユニット・西京人による「西京国」のインスタレーション。架空の都市国家「西京国」の入国管理局をグローバルスケールの視点で「窓」と見立てての展示。展示だけかと思いきや、その先に進むには、入国検査場の規則に従って次の4つのいずれかを選択しなくてはならないと、ゲートに座る女性がおっしゃる。

とびきりの笑顔か、お腹の底からの大笑
または
お好きな歌を一小節
または
チャーミングな踊り

 この静まり返った美術館でどれか選べとは。なんと斬新な企画!

 飛沫感染と、これ以上笑い皺が深く刻まれることを恐れた私は、チャーミングな小躍りを選択。無言で踊って無事ゲートをくぐり、西京国に入国できた。視聴者を巻き込むインスタレーション。世界中にある移民問題や各国が分断しつつある現実の閉塞感におもいきり疑問符を突き付けてくる作品だった。

西京入国管理局

毎回驚きと気づきを与えてくれる丸亀美術館の企画に賞讃を送りたい。
高揚した気持ちを抱えたまま、苦手な講演会に挑み、調子を上げてブログを書いている私である。

この企画展、来年1月11日まで。超おススメです♡。
窓展 窓をめぐるアートと建築の旅